世の中には2種類の人間がいる

ガリ勉してAランクの大学へ行く人と、ノー勉でBランクの大学へ行く人だ。

(※大学はものの例えであって、世の中の人は全員大学へ行くのが当たり前みたいな話ではないです、念のため)

私はガリ勉してAランクの大学へ行った側の人間である。Bランクの大学へ行く人が部活や恋愛など青春を楽しんでいる横で、青春などには目もくれずに勉強に明け暮れていた人間である。

むろん、ランクだけで比較すればBランクよりもAランクの方が上である。しかし、生き方という意味ではノー勉でBランク側の人の方が圧倒的に効率の良い生き方をしている。部活に一生懸命打ち込んだり、恋愛で色々な感情を知ったり、色んな場所へ行ったりと、仲間との悲喜こもごもを通じた様々な人間関係の体験…そういった経験を学生生活ですることができた上で、そこそこの大学へ行くバランスの良い人間の方が、勉強するしか能のない人間よりも、現在の社会では求められている。

ビジネスの世界では、「最小の労力で最大の成果を上げられる」ことがもてはやされる。それに加えて社会で必要なビジネススキルというのは、実際の作業内容がどうこうというよりは、人に好かれる能力、政治力、根回し力、人を納得させられる話術、対立する2つの勢力の落としどころの見つけ方…そういった「人間関係の中で磨かれるスキル」に集約されるのである。

つまり、いくらAランクの大学を卒業したといっても、学生時代に人間関係の中で揉まれて自己を磨くことを学ばなかった人間など不要なのである。ノー勉でAランクであれば、その人はもともと能力が高い人なので、研究者などの道もあるだろう。しかし、私がAランクの大学へ行くことができたのはガリ勉のおかげであって、Aランクの大学へ行けなかった人は単純にガリ勉をしていなかったからである。能力の差ではない。むしろ効率を考慮すると、ノー勉でBランクに行った人の方が能力が高いとすらいえる。

私はいわゆる陰キャなので上記の現実を知った上で過去に戻ったとしても、陽キャの人が送るようなザ・青春といった学生生活は送れないだろう。それは分かっているのだが、自分の生き方に対してコンプレックスや劣等感のようなものを感じている。良い結果を出すのに時間が必要な人よりも、時間をかけずにそこそこ良い結果を出す人の方が社会からも必要とされていて、効率良く生きられて、色々なことができて楽しそうだ。人よりも多く時間をかけなければいけないような燃費の悪い人間などお呼びじゃないのだ。

ところがピアノの世界はそうじゃなかった。ピアノの世界で効率なんて言葉を口にする人はいない。時間のない社会人の願いとして「効率の良い練習方法があったらな」とぼやくことはあるだろう。しかしピアノを練習している人ならば結局弾けるまで練習するしかないのだと心の底ではわかっているはずだ。「毎日15分の練習でプロ並みの演奏ができるようになる方法!」なんて魔法のようなコンテンツは存在しない。

一流のピアニストは上手くなるためには地道にコツコツ練習する以外に方法はないことを身をもって知っている。ある特定のテクニックを弾くコツ、みたいなものはあれど、そのコツを自分のものにするには自分のものになるまで何回でも練習するより他はない。上手く弾けない部分は上手く弾けるまで練習しろと、何百回でも何千回でも練習しろと、結局鍵盤に長く触っている人が上手くなるのだと、口をそろえて言う。

できないなら、できるようになるまでやれ。何時間でも何百時間でもとにかくできるまでやれ。そして最終的にできるようになった人が勝ち。

私はピアノが上手くないし、1日何時間も練習するのが当たり前のピアノの世界からしたら、私の練習時間なんてそれこそ「ノー勉」の扱いだろう。しかし、こういった言説は、自分の生き方を肯定してくれているような気がするのだ。効率が悪くても、カッコ悪くても、ダサくても、できるようになれば良い。時間をかけて、地道にやる。演奏がすべて、結果がすべて。こういう世界は私にとって居心地が良い。もちろん、私はピアニストではないので、結果で比較されるステージには立っていない。趣味だからどんなに下手な演奏をしても誰も何も言わない。だからこそいえることかもしれない。演奏で生計を立てる立場だったら、別の感情を抱くのかもしれない。でも「毎日しっかり練習しろ」「基礎からキッチリやれ」「上手く弾くコツなどない、ただ練習するのみ」と言われるのは、私の生き方とフィットしていて、「それでいいんだ」と思えて、安心できる。

だから私はピアノの世界が好きだし、ピアノの練習が好きだし、ピアニストやピアノが弾ける人、ピアノを練習しているすべての人を尊敬している。ピアノっていいよな。楽しいよな。憧れの人みたいに上手く弾けなくてもできなかったことがだんだんできるようになっていくのって気持ちいいよな。練習しようぜ。毎日15分の練習でプロのように上手く弾けるようになる魔法があったとしても、多分それ使って上手くなっても楽しくないよ。地道にやろうぜ。

以上。いきなり何を書き出したんだ私は。思春期か。

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